AIが奪うのは、仕事か? それとも「役割」か?

AIが奪うのは、仕事か? それとも「役割」か? 〜AmazonとMicrosoftの決断が示す未来〜

「AIで人がいらなくなる」と聞いたとき、どんな未来を想像しますか? それは、仕事そのものがなくなるのか、それとも私たちの“役割”が変わるだけなのでしょうか。

2025年6月、AmazonとMicrosoftから発表されたニュースは、この問いにリアルな輪郭を与えてくれました。

 

 AIで「仕事」が減るという現実

米AmazonのCEO、アンディ・ジャシー氏は従業員向けの書簡で、AIによる社内効率化を背景に「今後数年で管理部門の従業員数が減る見通し」と明言しました。

Amazonは社内でも、AIが業務を代行する“エージェント機能”を積極的に活用しています。もはや現実として、AIによる業務代替が始まっているのです。

一方、Microsoftでは、2025年5月に米ワシントン州の本社で2000人の人員削減が行われ、そのうち4割がプログラミング関連のエンジニアでした。AIが得意とする分野に人間の居場所がなくなりつつある──そんな印象を与える出来事でした。

 

一方で、“AI人材”には億単位の報酬

対照的に、AIエンジニアの争奪戦は加熱しています。

OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏は、Meta社がOpenAIの社員を引き抜くために「1億ドル(約145億円)の移籍金」を提示したことを明かしました。実際、MetaはGoogleの著名研究者を獲得しており、まるでプロスポーツ選手のような人材獲得合戦が繰り広げられています。

つまり、「AIで仕事が減る」だけではなく、AIを使いこなす“上流の役割”には、逆に莫大な価値がついているのです。

奪われるのは「作業」か「役割」か?

ここで一つ、重要な問いが立ち上がります。

── AIが奪うのは「仕事」なのでしょうか? それとも「役割」なのでしょうか?

AmazonやMicrosoftの事例を見る限り、AIが代替するのは「繰り返し可能な作業」や「手順化できるタスク」が中心です。

一方で、AIを設計する人、使い方を定義する人、意味づけを行う人はむしろ求められている。

この構図は、私たちに「どの領域に立つか?」という問いを投げかけてきます。

まとめ

AIに仕事を奪われた人と、AIで価値を生み出す人。 両者の差は「才能」ではなく、「立ち位置」と「役割の設計」にあるのかもしれません。

執筆:鹿内節子