―― AI時代、“考える人”に残される未来
「物知りな人」と「考える人」、どちらがこれからの時代に必要とされるのでしょうか?
かつては知識量がモノを言いました。「そんなことも知らないの?」という一言が、職場や学校で人の優劣を分けていた時代もあります。
でも、いまは違います。何でも検索できるし、AIに聞けば一瞬で答えが返ってくる。 だからこそ問われるのが、「問いを持てるかどうか」です。
■ 知識は“答えのストック”、問いは“未来への入り口”
たとえば、知識は冷蔵庫の中の食材のようなものです。たくさんあれば料理はできるかもしれません。 でも、それだけでは食卓には何も並びません。何を作るかを考え、手を動かさなければ。
問いは、その「何を作るか?」を決めるレシピのような存在です。 つまり、知識は素材、問いは調理の起点なのです。
どんな問いを持つかによって、使う知識も、意味づけも変わります。
■ AIは“問いの意味”までは理解できない
AIに聞けば、歴史の年号も、病気の症状も、法律の条文もすぐに出てきます。 でも、「なぜそれを知りたいのか?」や、「本当にそれが知るべきことか?」という問いの本質には触れられません。
たとえば、AIに「この企画、もっと良くするには?」と聞いたとします。 すると、デザインを変えるとか、ターゲット層を見直すとか、色んなアイデアが出てきます。
でも、「そもそもこの企画は誰のため?」「その人たちは何に困ってる?」といった“問い直し”は、人間の役割です。
■ 知識は「過去」、問いは「未来」をつくる
知識は、すでに誰かが得た“答え”の蓄積です。辞書や教科書にあるものですね。 でも、問いは「まだ誰も答えを出していないこと」。 つまり、問いがあるところに、未来があるのです。
たとえば、ある士業の先生が「契約書を正確に作れる」だけでなく、 「この契約、将来どんなリスクがあるか?」と考えられたら、どうでしょう。
その人は“単なる知識提供者”ではなく、“未来のトラブルを防ぐパートナー”として信頼されるはずです。
■ 「問い」は、思考のスタートボタン
問いがなければ、思考は始まりません。 そして、問いがあるからこそ、知識が意味を持ちます。
私たちは、「何を知っているか」ではなく、「何を知ろうとしているか」で評価される時代に入っています。
たとえば、若手社員が「この資料の作り方、どうすればもっと伝わるか?」と聞いてきたら、どう思いますか?
ただ「作りました!」と言ってくる人より、ずっと“伸びしろ”を感じるはずです。 それは、「問いを持っている人は、成長する」からです。
■ まとめ:知識は埋もれる。問いが未来をひらく
情報は、誰でも手に入る時代。 だから、「知っているだけ」では埋もれてしまう。
でも、「問いを持てる人」には、必ず出番があります。 問いがあるところに、信頼される会話が生まれ、商品が生まれ、仕事が舞い込んできます。
そして、AI時代においても、“問いを立てられる人”が最後に残る。 それは、私たちが知識を超えて、「考える存在」であるからです。
あなたは、いまどんな問いを持っていますか? その問いこそが、あなたの未来を決めるのです。
執筆:鹿内節子